教育課程
生命医療学専攻(博士課程)は、6年制の医学部?薬学部卒業生のほか、社会で活躍する医師?薬剤師などに対して、高度な教育研究の場を提供する課程であり、専門分野の卓越した知識や見識、分野横断的な深い考察力と高い倫理観、高度な研究能力を持った先端的医学?薬学研究者、高度医療人としての医師?薬剤師、高度な教育研究が行える教育者等の養成を目的としています。これらを踏まえて教育課程を編成し、下記のとおり授業科目を開設します。
また、がん専門医療人材の養成を行うため、「緩和医療専門医養成コース」及び「がん薬物療法専門医養成コース」(先進医学プログラム)を開設しています。コースの選択は入学志願時に行います。当該コースの学生は、一般の学生と同様に共通科目により基礎的?応用的知識を修得するとともに、ベーシック科目において医学?薬学分野の専門的な知識を自身の興味?関心に応じて学びますが、専門科目については各研究指導教員の指導のもと、それぞれの専門分野で必要となる知識を身につけられる講義を選択します。特別科目については、コース選択と同時に履修すべき特別演習及び特別研究が決定(それぞれ「総合医療医学」「器官病態内科学」)される仕組みとし、それぞれの専門分野の研鑽を行います。
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共通科目
それぞれの専門分野で共通に必要となる知識を修得するため、必修の共通科目(3単位)として研究?医療倫理、多職種連携、医療情報リテラシーについて学ぶ授業を開設しています。
「研究倫理?医療倫理学B」では、ゲノム編集、遺伝子解析、動物実験など医学?薬学研究における指針や法律、医療の提供に関わる倫理的問題について発展的な内容で修得することにより、先端的医学?薬学研究者、高度医療人として求められる高い倫理観を養います。
「多職種連携B」では、チーム医療の概論、リハビリや医療安全などにおける多職種連携、多職種連携における看護師?薬剤師の役割など、医療ニーズに応えるための先端医学?薬学研究や高度先進医療?地域保健医療の推進において重要な多職種連携の実践に係る手法及び知識を修得します。
「医療情報リテラシーB」では、医療情報の活用や統計学の重要性が高まっている現状を踏まえ、医療ビッグデータや統計解析学、ゲノム情報などに関する内容を学修し、自立して研究を展開していくために必要な知識を身につけます。
ベーシック科目
医学?薬学の応用的知識や幅広い保健医療課題等について学ぶことで、課題発見能力や深い考察力を身につけるため、必修?選択のベーシック科目(修了要件は必修3単位、選択2単位以上 計5単位以上)を開設しています。医学?薬学横断的な高い研究能力の修得や研究成果の発信などにおいて特に重要な3科目は必修とし、その他は各学生のバックグラウンドや関心にあわせて選択できます。
「発展的研究方法論」(必修)では、電気生理学的実験法や社会調査法、トランスレーショナルリサーチ論など、国際的活躍の基盤となる発展的な研究手法を様々な観点から学ぶことにより、研究を遂行する上で必要な専門的知識を身につけます。
「疫学方法特論」(必修)では、ヒト集団を対象とした広義の疫学研究の立案や関連論文の批判的吟味に必要な疫学の重要概念や研究手法を系統的に修得します。
「Advanced Academic English」(必修)では、英語論文の読み方?書き方のほか、学会等でのプレゼンテーションを想定した講義を通じて、英語による発信方法を修得するとともに、研究の成果を世界に発信する能力や国際的な研究を推進する能力を涵養します。
「基礎医学?薬学特論Ⅰ」(選択)では、実験動物モデルの作成手法や先端的医学?薬学研究推進の基盤となる生理学、分子病態解析学、生体機能解析学などの基礎医学?薬学の知識を幅広く学修することにより、医学?薬学横断的な観点から考察する能力の基礎を築きます。
「基礎医学?薬学特論Ⅱ」(選択)では、薬理学、分子機能形態学、薬品作用学など、基礎医学?薬学の知識を幅広く修得し、先端的医学?薬学研究を推進するために必要な考察力を涵養します。基礎医学?薬学研究への理解を深めるため、ⅠとⅡのいずれかを必ず選択します。
「地域医療課題特論Ⅰ」(選択)では、脳血管障害、循環器疾患や糖尿病などの地域における保健医療課題等について理解を深めることにより、自ら課題を発見する能力や幅広い観点から考察する能力の基盤となる知見を修得します。
「地域医療課題特論Ⅱ」(選択)では、地域医療の現状や救急医療、周産期医療など地域の保健医療課題等について幅広く学ぶことにより、課題発見力や幅広い考察力の基盤となる知見を身につけます。県立医科大学大学院の学生として地域の保健医療課題について見識を深めるため、ⅠとⅡのいずれかを必ず選択します。
専門科目
分野横断的に深く考察し、高度な研究を行うために必要な医学?薬学分野における最新の知見を自らの専門分野に限定することなく学ぶため、選択?必修の専門科目(修了要件は5単位以上)を設定しています。医学系教員による「分子生命科学特論」「感染症学特論」「病理病態学特論B」「腫瘍学特論」(医系型科目)、薬学系教員による「最新臨床薬理学特論」「免疫?発がん特論」「神経再生?発生?疾患学特論」(薬系型科目)、両分野の教員による「死因究明学特論」「医療データサイエンス学特論B」(統合型科目)を配置し、自身が選択した学位プログラムに応じて医系型もしくは薬系型の科目を重点的に学ぶとともに、選択していない学位プログラムに関する科目や両分野の教員による科目についても、自身の研究課題や関心に基づいて選択し、幅広い知識を修得できる構成としています。
各学位プログラムの履修条件は下記のとおりです。
- 先進医学プログラム選択生:医系型科目から3単位以上、薬系型科目から1単位以上、統合型科目から1単位以上
- 先進薬学プログラム選択生:医系型科目から1単位以上、薬系型科目必修3単位、統合型科目から1単位以上
医系型科目
「分子生命科学特論」では、高度な基礎研究の推進において必要な生化学、分子遺伝学の専門的知識、「病理病態学特論B」では、病理学に関する高度な知識を修得するため、まとまった授業数を確保し、重点的に学ぶ場を提供します。
「感染症学特論」では、昨今新たな感染症への対策が重要となってきていることから、感染症の予防や治療に関する高度な研究能力を身につけるため、様々な感染症を専門とする教員が講義を行います。
「腫瘍学特論」では、地域の保健医療課題の一つでもあるがんについて、課題解決に向けた考察?研究ができる人材を養成するため、手術?薬物治療?ゲノム医療?放射線治療?緩和医療?がん各論などの様々な観点から最新の知見を学びます。
薬系型科目
「最新臨床薬理学特論」では、最新の薬物治療、薬物療法や医療安全における臨床薬理学の役割や臨床応用等について、「免疫?発がん特論」では、ウイルス感染免疫学、粘膜免疫学、発がんに関わる遺伝子発現制御、がん細胞における幹細胞性についての講義を行うことで最新の知見についての理解を深めます。
「神経再生?発生?疾患学特論」では、中枢神経系や末梢神経系を構成する細胞の発生、発達や役割について理解を深めたうえで、神経に係る疾患の病態や発症機序、当該疾患に対する主要な治療薬の作用機序、副作用について講義を行うことで、再生医療の可能性と課題について理解を深めます。
統合型科目
「死因究明学特論」では、多死社会である現代において重要な位置づけとなっている死因究明について、医学?薬学統合型大学院の特徴を活かし、法医学、公衆衛生学、衛生薬学、病態解析学などの医学?薬学両分野の幅広い観点から教授します。
また、近年、医療ビッグデータやゲノム情報など医療関連分野のデータ活用が重要となってきていることから、「医療データサイエンス学特論B」では、統計学をツールとして医学?疫学データに適用することにより、病態の原因解明や診断のための基礎研究、個別化医療?予防医療に関する研究等に応用する能力を培います。
特別科目
教育研究の柱となる領域は医学系6領域(社会医学、形態機能医学、細胞分子機能医学、総合医療医学、器官病態内科学、器官病態外科学)、薬学系4領域(物理?化学薬学、生命薬学、医療薬学、臨床?社会薬学)から構成し、領域毎に特別科目を設定しています。専門分野以外も幅広く学ぶシステムとするため、研究内容の関連性により領域をまとめ、医学系?薬学系それぞれに2つの区分を設け、自身の専門分野と異なる分野を明確にすることで、後述する副科目の履修を可能としています。
先端的医学?薬学研究や高度先進医療?地域保健医療を指導的立場から推進できる行動力や共同研究?医療チームのリーダーとしての資質を涵養する研究指導科目として特別科目を開設しています。
この科目群は、医学系及び薬学系の研究指導教員による研究指導科目であり、学生は入学志願時に申告し入学後に決まる主科目に基づいて特別研究科目を選択するとともに、特別研究と同一の特別演習を選択します。それぞれの科目では、研究指導教員のもと主に演習を行う「特別演習Ⅰ、Ⅱ」及び論文作成からなる「特別研究」を開講しています。また、「特別演習Ⅰ」については、主科目と同じ区分から一つ、異なる区分から一つ、副科目を選択します。これは、主たる研究指導科目以外のより広い知識?技術を修得し、また医学及び薬学の垣根なく、他の講座?研究室に出入りし、より広く多様な知見を得て、学生の知的好奇心を刺激し更なる研究意欲の活性化を図る場を提供するためです。このことによって、自身の研究課題を多角的に探究することが可能となります。