小児糖尿病キャンプ
学年 2年
氏名 井上 ゆな
1. 滞在場所:バートン糖尿病センター
2.滞在期間:2019年7月26日(日)から8月3日(土)
3. 目的:異文化に触れながら種々の人々と交流すること。
糖尿病についての知識を養うこと。
4. 内容
①キャンプについて
このキャンプは6歳から16歳のⅠ型糖尿病児を対象としたキャンプである。男の子が参加しているキャンプをジョスリン、女の子が参加しているキャンプをクララバートンと呼ぶ。私たちは今回、7月28日からジョスリンキャンプに滞在し、8月2日の朝にクララバートンキャンプに移動した。キャンプ期間は1週間コース、2週間コース、3週間コースがあり、自分で期間を決められるようになっている。糖尿病児の他に医師、看護師、栄養士などのヘルスケアチームやボランティアの人々などが参加しており、ボランティアのほとんどが彼ら自身もⅠ型糖尿病を患っていた。
1日のスケジュールはキャンプ中、基本的に同じである。ジョスリンでは主にバスケットボール、サッカー、野球、アルティメット、ガガ、ラクロスなどをして遊んでいた。クララバートンでは主にビーチバレーやダンスをして遊びながら、おしゃべりも楽しんでいた。また水筒を土台としてミサンガ作りもしていた。私たちも一緒に遊んだが、子供たちは私たち以上に元気で走り回っていて、糖尿病であることを感じさせられなかった。しかし、遊んでいる最中に低血糖になり、ぐったりしている子供や、元気だが血糖値が下がり血糖値測定器からアラームが鳴っている子供もいた。そのような子供たちは、スナックやタブレットを食べて血糖値を上げる必要がある。その間、遊ぶことができず落ち込んでいる様子や、ぐったりしてそれどころでない様子などがうかがえ、糖尿病であるという事実を突きつけられたように感じた。
夕方のプログラムでは小さい子供たちを楽しませるために、大人の参加者がイベントを行っていた。プロレスをしたりプールに飛び込んだり、クリームの投げ合いをしたりと、日本人にとっては少し過激と感じることを盛り上がり、楽しんだりしていた。また、盛り上がった際、日本では手を叩いたりするが、アメリカでは机を叩いていたことに文化の違いを感じた。
糖尿病について
血糖値を調節するためにはインスリンが必要で、インスリンを投与するための医療機器には皮下注射タイプとポンプタイプがある。前者は即効型であり日本で多く用いられている。後者は継続的にインスリンを投与することができ、アメリカで多く用いられている。少量のインスリンを調節でき、点滴で使用するような小さめの針なので注射ほど痛くない。しかし、食事に対して直接的な効果は得られないため、緊急事態で血糖値を下げる必要がある場合は、注射と併用する場合もある。
血糖値測定は糖尿病患者にとって重要なことで、毎日定期的に行っている。食前はパッケージに記載されているカーボ数を計算して、インスリンの量を決定し投与している。りんごなどの大きさや種類によって具体的なカーボ数が分からない場合は推測している。この場合、多少の誤差は問題ない。夜中にも血糖値を測定する必要があり、機種によっては、低血糖になった時アラームで知らせてくれるタイプのものもあるが、起きて手動で計測しなければならないものもある。キャンプ中の血糖値管理はスタッフが全て行っているが、自宅では両親や本人が行っている。
②病院見学(UMass Memorial Medical Center)
アメリカでは治療や診断をすることができる看護師が存在する。それはNursing Practitioner(NP)と呼ばれ、一般的な看護学校を卒業後、更に2年間付け加えて学ぶとその資格を得ることができる。珍しい病気や完治が難しい病気の治療や、外科手術などはできないが、ほとんどの医療行為を行うことができ、医師の業務とされる行為の一部を実施することができる。
糖尿病患者の診断の流れは、まず、診察室で医師が身体の異常を診る。悪かったら専門職を紹介する。全ての専門職が1フロアにあることが、この病院の特徴である。医師と患者のコミュニケーション手段にはE-mailでのやりとりや教育クラスがあり、教育担当者や栄養士と会うことができるクラスの連絡をとったり、1対1で相談したりすることができる。
糖尿病患者で生活習慣を改善できない人に対しての支援は2つある。1つ目は、教育クラスに参加を促して、体重、活動などの管理をすることの大切さを伝え、管理ができないと、腎臓や目の病気、脳梗塞、足の切断などになる恐れがあることを理解させる。2つ目は、行動精神科医がいて、専門的に精神面からサポートしている。
糖尿病患者に対して看護師ができることは、血糖値を確認してインスリンの量を決めたりするだけでなく、おしゃべりしながら聴いた言葉やしぐさなどに着目して患者の心を読み取り、不安を取り除くことである。
UMass Memorial Medical Centerには様々な研究室があるが、他では行っていないような研究が、世界中から集まった科学者によって行われている。その中の1つにⅠ型糖尿病の研究も含まれている。1970年には、ネズミのⅠ型糖尿病の完治に成功した。現在、ネズミが作った免疫を人間に投与するための研究や、体内の細胞を攻撃している原因や予防手段の研究も行われているが、開発段階である。
5. 考察
このキャンプは、多くの人々の思いやりの心から構成されている。スタッフにⅠ型糖尿病の人が多いのは、自分も糖尿病児の気持ちがよく分かり、糖尿病になっても楽しく活き活きと過ごすことができるということを経験してもらいたいという思いがあるからだ。
日本では、インスリン投与の際、皮下注射が一般的であり、アメリカのようにインスリンポンプはほとんど用いられていないことから、アメリカと日本では糖尿病に対する治療方法や治療に対する考え方が異なることが分かる。また、日本でインスリンポンプの普及率が低い原因として、機材費用や保険の適用について様々な問題が生じること、指導を行える人の不足、インスリンポンプ療法についての情報不足などが考えられる。
UMass Memorial Medical Centerでは、Ⅰ型糖尿病の研究が長年行われていることから、近未来、Ⅰ型糖尿病の完治が可能になる医療が開発される可能性がある。
6. 感想
先天的に糖尿病になった子供、突発的に糖尿病になった子供は、糖尿病でない子供たちと同じものを食べられなかったり、同じように遊べなかったり、夜中に血糖値管理のために起きなければならなかったり、痛い思いをして注射をしなければならなかったりと、これまでたくさんの困難を乗り越えてきている。しかし、このキャンプに参加している子供たちは、糖尿病を重くとらえず笑いに変えたり、みんなで一緒に血糖管理をしたりすることで、辛さや喜びを共有でき、心から楽しむということにつながっていると感じた。
私の中で今回目標にしていたことは、ホームシックになった子供の不安を取り除くことだった。実際にホームシックになった子供が何人かいて、勇気を出して歩み寄ってみたが、どのように声をかければ良いか分からなかった。背中をさすってあげることしかできない自分が悔しかった。しかし、さすってあげることで泣き声が少し弱まった気がした。タッチングが効果的なのは日本だけでなく世界共通であると分かった。言葉が通じないもどかしさや、英語を聞き取れない悔しさなどをたくさん経験したので、もしまた不安そうにしている外国人と接する機会があれば、不安を取り除くことができる声かけをしながらタッチングを行いたいと思った。
7. 謝辞
このような素敵な体験をさせて頂くことができたのは、支えてくださった多くの方々のおかげです。助成金をくださったトランスコスモス財団様、大学の先生方および職員の方々、ありがとうございました。